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Thursday, July 29, 2010

暑中お見舞い

 暑中お見舞い申し上げます。

日本では梅雨明けと共にほぼ全国で猛暑の夏となったようですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

当地香港では、本格的な夏の到来とともに、鮮やかな青空に巨大な積乱雲が湧きのぼりジリジリと照りつける晴れ間と、熱帯性低気圧によるメチャクチャな大雨の波状攻撃をうけております。

このたび、弊社起業のきっかけとなり、ここ半年間にわたって組成のお手伝いをさせていただいておりました、中国西部開発特化型プライヴェート・エクイティー・ファンドが、6月30日をもってローンチされました。その他にも今夏中にローンチを予定しているファンド案件を3件準備中であり、おかげさまで多忙な創業1年目となっております。

今後も、ファンド組成や、広義の資産運用ストラクチャーに関するアドヴァイザリー業務を拡大するとともに、ファンド/資本と日本企業の資金需要の橋渡しをつとめる方向で事業拡大をめざしてまいりたいと思っております。

8月中は出張をかねて、久しぶりにロンドンを訪問すると共に、ポーランドのヴロツワフ(ブレスラウ)近郊で17世紀の司教館を修復しているイギリス人の旧友を訪問する予定です。9月の13日(月)の週に、日本への出張を予定しています。

また夏休み明けにひと荒れありそうな国際金融市場ですが、混乱の時こそブレない価値観と冷静な判断力が重要であることを再認識し、チャンスに挑戦していきたいと思っております。

末尾ながら、皆様の益々のご健勝とご発展を祈念しつつ、ご挨拶とさせていただきます。


香港にて
平成22年7月
矢澤 豊

Monday, May 3, 2010

海外資産の相続問題

私が香港で暮らして始めて早や7年目になりますが、毎月必ず一回といっていいほど頻繁に、次のようなご相談をいただきます。

「実は知り合いの方が亡くなられて...で、香港に銀行口座を持っておられるらしいのですが...未亡人の奥様に頼まれまして...どなたか手伝っていただける方いらっしゃらないかと...」

なかには、知り合いの、知り合い、そのまた知り合い...と、まるでミ○シィや○リーのような、ソーシャルネットワークサイトの「お友達申請」みたいにツテをたどってこられる方もおられます。こうした問題の切実さ、そして助けの手を差し伸べる人たちが少ないことを、ものがたっているのでしょう。

遺族の方にしてみれば、故人以外はだれも詳細を知らされていなかった海外資産であり、あってくれればあってくれるにこしたことはないけれど、言葉の壁もあるし、お葬式を済ませたばかりで、まだまだ諸事多忙な折にアテもツテもない香港くんだりまで出かけていって、あるやなしやの銀行口座と資産を探しに出かけるわけにはいかない...というのが偽らざる事情でしょう。

私としても、せっかく縁をたどってご相談にきていただいた方の為に、できることならお力添えして差し上げたいのですが、生前面識もなかった故人の方の代理に、ご本人が亡くなった後になりすますわけにはまいりません。また、遺書無くして亡くなられた方の遺産相続を、香港で執行する為には、死んだ方の居住国において遺産相続に関する詳細が決定するまで、留保されてしまいます。また、そのような日本での諸手続きに関する書式等を、英訳/公証しなければなりませんので、必然的に時間とコストがかかることとなります。

あるかなしやの遺産を目当てに、その遺産の大部分を取り崩すことになるお仕事を、終着地点が全く見えない時点で引き受けることになるわけです。どうみても関係者の皆さんに喜んでいただける「いいお仕事」にはなりえません。そこで不本意ながら敬して遠ざけさせていただいております。

もっとも最近では、ご本人の存命中に、資産継承の簡便化を図るサービスも提供されているようです(コチラをご参照ください)。

しかし、こうしたご相談を多くうけているうちに、問題の根本的な解決にはなりませんが、まずは解決への第一歩である手続きを、皆さん忘れられていることに気がつきました。

それは故人の口座の凍結です。

遺産相続の実務においては、まず最初に故人の資産の保全を図らなければなりません。あまり考えたくないことですが、もしかしたら、遺族の方々がご存知のない人物が、故人の名義を騙って口座の資金や資産を流用している可能性もあります。

そのような事態を避ける為にも、銀行などに速やかに本人の死亡の旨を伝え、資産の保全を図ることが肝要です。

例えばHSBCに限って申し上げれば以下の手続きを踏むことにより、口座の凍結がたいてい可能になります。


  1.  故人のパスポート(その他本人確認ができる文書)のコピー、および死亡届のコピー(双方とも英文で真正証明を付ける)を用意する。真正証明に関しては、弁護士/会計士/司法書士/税理士など(公証人である必要はない)など、日本に星の数ほどある「士業」の有資格者にお願いし、以下の文言の書き込み、そして署名をしてもらう。

    I, [弁護士/会計士/司法書士/税理士などの個人名], a qualified and registered [attorney/accountant/solicitor/tax attorney...] in Japan, of [署名者の住所], hereby certify and confirm that this is a true copy of the original document.

    なお、死亡届記載の住所および本籍地がパスポート(その他本人確認ができる文書)でも確認できないといけませんので、パスポートの住所・本籍地記載ページ(最後のページ)もコピーしてください。
  2. 死亡届(また本人確認文書がパスポート以外の日本語文書の場合)は英訳を添付する必要があります。こちらの翻訳にも、以下の英文真正証明の文言と、署名が必要です。

    I, [弁護士/会計士/司法書士/税理士などの個人名], a qualified and registered [attorney/accountant/solicitor/tax attorney...] in Japan, of [署名者の住所], hereby certify and confirm that this document is a true English translation of the original Japanese document.
  3. これらパスポート(その他本人確認文書)、死亡届、英訳の書式一式に、カバーレター(文案を以下に記載しておきます)を次の宛先まで送ります。
    HSBC Deceased Account Section
    HSBC Centre
    1 Sham Mong Road
    Kowloon,
    Hong Kong

    カバーレターの文案は以下のとおり。

    [日付]
    Dear Sir/Madam,

    My name is [故人の代理の方のお名前], and I am acting for and on behalf of the estate of [故人のお名前], who died on [死亡日時].

    I have enclosed herewith the copies of the deceased' [passport/その他本人確認文書] and certificate of death, with its English translation.

    Upon receipt of these documents, I would be grateful if you could immediately freeze the deceased's accounts with HSBC, the details of which are as follows:-

    Acount Name: [故人の口座名 ]
    Account Number: [口座番号]

    I, or any other person duly appointed to represent the deceased's estate in HK, will contact you in due course for further actions to be taken in relation to this matter. In the meantime, please let us know if you require any further action from us in relation to freezing of the said account.

    Yours,
    [代理人署名]
    [代理人連絡先]


あくまでもご参考まで。

オーストラリアの鉱山税

収益に40%の課税とは...オーストラリ労働党("R" "U" "Double D"= Rudd)やることがえぐいですな。

FTの記事はこちら

Wednesday, April 28, 2010

シンガポールにおけるファンド規制の強化

シンガポール当局がファンドの規制強化に乗り出してきています。

FTの記事はこちら

金融危機以降、特に昨年中から予告されていたことなので、「え〜っ!」というよりは「ついに」という感じのニュースですね。

最近では目論見書の中でシンガポール籍のマネージャー会社法人について言及する場合も、

「シンガポール金融当局(Monetary Authority of Singapore)に適用外マネージャーとして登録された...」

と言えず、

「シンガポールに適用外マネージャーとして存在する」

という記述を強制させられていました。

シンガポール当局としては、とにかく関連づけられたくない、縁を切りたい、という「けんもほろろ」な対応だったわけです。

数年前、積極的にファンドビジネスの招致に躍起になっていた頃は、

「アジアのオフショア・センターを目指す!」

と意気をあげていたのに、逆風と海外からの圧力で手のひらを返したようなこの仕打ち。

あんまりと言えばあんまりですが、これが事実上、一党独裁政権であるシンガポールのリスクと言えるでしょう。鋭角にコーナリングしてくる政策変更と、その施行の徹底ぶりはさすがです。

「別れろ、切れろ」

は、芸者のときに言う言葉ですが、大事なお金を預かり運用する人には、簡単に「死ね」とも言えません(*1)。今回の規制強化でスキームのリストラクチャリングの必要性が生じる方、どうぞお気軽にお問い合わせください。

*1 「なんか物騒な話をするコンサルだな」と、早とちりをされた方。泉鏡花の「婦系図」です。念のため。

Tuesday, April 20, 2010

中国「国産」買収ファンド

CITICさんもがんばっています(コチラ)。

Tuesday, April 6, 2010

中国人とのビジネスの場で絶対口にしては行けない事

「もうお昼の時間ですが、ランチはキャンセルして、このまま会議を続行しましょう。」

コチラのブログからの受け売りですが、なかなか的を得ています。

誰から聞いたのか、どこで読んだのか、失念しましたが、私が好きなのは次のような言葉です。

「一緒にビジネスをする人とメシを喰うのではない。一緒にメシを喰うような人とビジネスをするのだ。」

香港で環境保護ビジネスの博覧会が開かれます(11月3〜6日)

入会したばかりの当地香港の日本人商工会議所の、中小企業部会による「環境セミナー」に、先日出席させてもらいました。

もうみなさんご存知のことですが、現在の中国は急速な経済成長の代償として、深刻な環境問題に悩まされています。

かつては日本も通ってきた道です。私が小学生の頃、学校の休みに葛飾の家から母の実家の横須賀まで行くと、川崎あたりから空の色が目に見えて変わっていたの、幼心にも覚えています。

そうした公害克服の先達として、日本企業のノウハウ、特に中小企業の技術力に期待しているとの、香港側からのお話がありました。香港としては、かかる日本企業の中国進出への橋頭堡として、香港を存分に利用してほしい、また技術提携/ライセンシングのハブとしての自らの国際地位を高めたいという思惑があるのでしょう。

そこでご案内があったのが、今年11月の3日から6日にかけて、香港で開催される「エコ・エキスポ・アジア」。詳細はコチラから。

(二年前の同様の催し物のレポートはコチラ。)

これからJETROなどでも、日本中小企業向け出展サポートのサービズなども提供されるでしょうが、当展覧会や環境ビジネスに関するより詳細の情報、またこの展覧会の機会に弊社スタッフによるサービスのご利用のご希望ございましたら、お気軽にご連絡ください。

ファンド、金融の話題に偏りがちなこのブログですが、弊社のモットーは「貴社の海外ビジネスのお供」です。お問い合わせ、お待ち申し上げております。

Saturday, April 3, 2010

中国ビジネスにおける香港持株会社を利用するメリットと注意点

ご存知の皆様には、「いまさら...」なトピックではありますが、備忘の為に。

中国本土の現地法人への資金注入や、配当金などで利益を還元することを目的に、香港に持株会社を設立することには、以下の利点が伴います。

1. 中国小会社から親会社へ支払われる配当金に対する源泉徴収額への優遇。外国籍の親会社に支払われる配当には原則20%の源泉徴収を支払わなければならないが、香港持株会社の場合、源泉徴収は5%。

2. 中国における源泉徴収を経た後、香港持株会社に支払われた配当金は、香港において課税対象とならない。(通常通りの香港税制の優遇を享受できるわけです。)

3. 中国ー香港間における、移転価格税制上の取り決めに基づき、中国小会社の製品を、香港持株会社を通じて販売する場合、かかる取引を通じて香港持株会社に生じた利益は、その50%のみが香港税務当局により課税対象とみなされる。

以下は、注意点です。

以前は、こうした香港持株会社の株を、ケイマンやBVIなどのオフショア籍の法人に100%保有させ、中国からいったん香港で吸い上げた配当金その他の収入を、最終的にオフショアで蓄積。またかかるオフショア持株会社を売却、または上場するといった、エグジット(出口)戦略がはやっていました。つまり資本取引を、すべてオフショアで行うという仕組みです。

しかし近年では、中国当局がそうしたオフショア利用によるCEPAの下の香港優遇政策の有名無実化を懸念し、香港持株会社が全くのパス・スルー、シェル会社と見なされた場合は、上記の税制上の優遇を取り消すといった動きに出るケースが多いようです。

現在、弊社がアドバイスをしている投資ファンド(大概はケイマン籍)に関しましても、いかにして、またどのレベルまで、香港持株会社に実体をもたせるか、というアドバイスに気をつかっております。

日本ー香港 租税協定への合意

以下にプレスリリースを転載します。詳細が判明次第、また詳述したいと思います。

Agreement in principle on the income tax agreement between Hong Kong and Japan
***********************************************************
The Government of the Hong Kong Special Administrative Region of the People's Republic of China and the Government of Japan have reached consensus on the agreement for the avoidance of double taxation and the prevention of fiscal evasion with respect to taxes on income.

This agreement intends to clarify the taxation on investment income and business profits of enterprises operating in each other's places and to avoid instances of double taxation. It promotes further investment and economic exchange between Hong Kong and Japan.

This agreement also enables both tax authorities to carry out effective exchange of information regarding tax matters in accordance with the international standard, with a common objective to prevent international tax evasion and tax abuse.

The key provisions of this agreement are as follows:

* It clarifies the scope of taxation on business profits of enterprises operating in each other's places.

* It reduces the withholding tax rates of dividends, interest and royalties paid to residents of the parties:

- the withholding tax rate on dividends is capped at 5% for a company of one side holding at least 10% of the voting shares of the paying company of the other side, and 10% for other cases;

- the withholding tax rate on interest is exempt for government institutions and capped at 10% for others;

- the withholding tax rate for royalties is capped at 5%.

* It enables both tax authorities to carry out exchange of information regarding tax matters.

* It includes provisions to prevent abuse of the agreement.

The agreement will be signed after the completion of necessary internal procedures by the respective governments. The agreement will enter into force after ratification (approval by the Legislative Council in the case of Hong Kong and approval by the Diet in the case of Japan).
Ends/Wednesday, March 31, 2010
Issued at HKT 10:00

Thursday, April 1, 2010

オフショア・スキームの維持・整理・清算などに関して

オフショアにおける法律事務所やその他プロフェッショナル・サービス産業は、1990年代以降、国際金融機関による、オフショアSPVを利用したスキームの一大ブームの波に乗り、急成長を遂げました。

しかし2008年のリーマン危機よりこの方、彼らにとってドル箱のビジネスであった証券化ビジネスが絶滅の危機に瀕しており、各々ビジネスモデルの転換に必死になっております。

ブーム時のオフショア・サービス・プロバイダーは、競合との差別化の為、トップクラスの大手法律/会計事務所より、キャリアの中堅に位置する優秀な有資格者をヘッドハントし、カリブ海、チャンネル諸島、香港などといったビジネス拠点に配していました。しかし、現在では、そのようなコスト高の中堅ジュニア・パートナー/シニア・アソシエイトを削減し、少数のパートナー・レベルのプロフェッショナルと、多数の秘書スタッフによる、大量生産体制に移行しています。

こうした余剰キャパシティーによるコスト問題と同時に、かかる「負の遺産」を継承しない新事務所を設立する動きや、以前はブティック系のビジネスモデルに甘んじていた中小規模の事務所/会社が、大手の寡占状態にチャレンジする場面も散見されるようになりました。結果として目立たないところで、競合によるフィーの「値切り競争」といった、以前ではあまり見られなかった(利用者側から見た)チャンスも出現しております。

こうした新局面を受けて、弊社におきましては、オフショア・スキームを利用される皆様が、より有利な形で各種サービスプロバイダーをご利用になれますよう、必要に応じたサポート業務を提供させていただいており、すでに数社のお客様にご利用いただいております。既存スキーム維持コストの削減、不要になったスキームの効率よい清算、または新規スキームの立ち上げなどに関しまして、ご相談、ご質問等ございましたら、お気軽に弊社までお問い合わせください。

Tuesday, March 30, 2010

中国社会保障基金(NSSF)が国外投資に意欲

ファイナンシャルタイムズ紙より(コチラ)。

先進国(欧米)以外では、インドと名指しできています。

アメリカによる人民元へのプレッシャーからくる、為替リスクはどう処理するのだろう?

NSSFは、日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)と関係が緊密なはず。

Thursday, March 18, 2010

プライベート・エクィティにおける上海より北京へ、という動き

Beijing Outmuscles Shanghai to Take the Lead in China’s PE Industry

以前は、オフショアの持株会社を通じた資本取引や、オフショア持株会社のIPOによるイグジット(出口戦略)など、中国本土ではなく、沖合での丁々発止が主流であったのが、中国投資ビジネスでした。

しかし国内の過剰流動性危機に瀕している中国政府は、国内にダブついた資金を効率よくまわすことを念頭においています。

そこで人民元ファンドや、中国の国内証券市場への上場というイグジットを考慮にいれた、中国国内戦略が、ファンドにとっても重要になってきています。

そこで監督官庁との緊密な関係を築くため、北京を重視するファンド・マネージャーが増えてきたとのこと。

PEビジネスに関しては、以前より上海、北京、天津、重慶という四拠点があげられていたのですが、西部開発に特化された重慶をのぞき、田の三都市の間では、政治的思惑も絡んだ、かなり激しい綱引きが始まっているのかも知れません。

中国関連の統計の杜撰

中国による米国債の所有残高が、今年2月に減少し、日本が一位に返り咲いた...という、日本人としては微妙に喜べないニュースがありました。

ところがこの数字は中国投資家による国外における米国債保有分を勘定に入れてなかったとか。

この統計自体は米国財務省発表なので、アメリカ政府も今ひとつ中国に関しては情報を把握しきれていないとみるか、それとも人民代表会議前に中国政府にサービスのチョンボをしてあげたのか...???

現時点で、中国の所有残高は8948億ドル。日本は7688億ドル。

中国の所有残高は58億ドル下がり、日本のそれは3億ドル下がったと。

BusinessWeekの記事はこちらから。

Monday, March 15, 2010

KKRがマネージメント・フィーを取らないファンドを設立

PE Managerより

"In a registration filing for the NYSE, Kohlberg Kravis Roberts said its $550 million E2 annex fund is taking the unusual step of not charging a management fee and only returning carried interest to the GP after any losses, costs and expenses are taken out of the fund’s profits."

ウォーターフォール配分の「ヨーロピアン化」などもいわれていますが、やはり金融危機この方、ファンド・マネージャー、特に流動性の低いプライベート・エクイティーに関しては、収益率への下方修正圧力がキツいようです。お金はダブついていても、お金が回っていない状況ですね。

もしかすると、こうした投資家からの圧力が、ファンド・マネジャーたち自身による「自社の上場」という手っ取り早い「キャッシュアウト」を後押ししているのかも知れません。すでに2007年にブラックストーンがNY上場を果たしましたが、KKRも上場に向けて動いています(コチラ)。

ファンド・マネージャーの上場に関しては、ファンドへの投資家と株主間における利益の相反がすでに問題視されています。株主としては、フィー収入やキャリード・インタレストによって、マネージャーの収益が上げることを経営陣に要求しますが、それはファンドの投資家にとってはのぞましい事ではありません。

しかし、業界大手二社による、「上場」という動きは、将来に向けて、収益配分方法の一元化と共に、マネージメントフィーの矮小化という市場圧力をサイドから増長することになるかも知れません。

中国とのビジネス - 投資ファンド・ビジネスからの管見

現時点における、私の個人的な視点からの観察を以下に書いてみます。今後、軌道修正する場合の起点として。

中国ファンド・ビジネスは、中国人が国外に出せないお金を、どうやって効率よく国内でまわすか、国内に戻せないお金をどうやって効率よく国外でまわすか、ということがフォーカスになってきています。

プライベート・エクイティ・ファンドの場合は通常5年というタイム・フレームで話を進めますが、現時点から5年後を遠望すると、中国共産党の指導層の世代交代を2年後に控えている事が、投資家の頭のどこかにひっかかっている状態です。そうした点からも、メインステージは中国だとしても、そのサイド・ショーとしてインドネシアに興味を持つ投資家が増えてきている印象を受けています。2年後というはっきりした時限爆弾の方が、漠然としつつもリアルなインドネシアの政情不安よりも、関心を集めているようです。

幸い、現時点における私のメインのクライアントたちは、マネージャー自身が相当以上のシード・マネーを自ら投下するファンドであり、彼ら自身がかなりの金持ちですので、案件がまわっています。そうした意味では、どちらかといえばファミリー・オフィスをよりコーポレート仕立てにしたようなお客様たちです。しかし純粋にファンド・マネジメントに特化した人々は、金融危機以来、投資家が一斉に財布のひもを締めたままですので、立ち枯れています。同様にそうしたファンド・マネージャーの資金需要を引き受けていた投資銀行も閑古鳥が鳴いている状況です。その一方で、流動性に(比較的)優れたヘッジ・ファンドには、その他の選択肢を失ってしまった機関投資家の資金が舞い戻りつつあるようです。

中国/華僑の富裕層はファンド・マネージャーにお金を預けることを潔しとしませんので、投資案件の一本釣りに特化しています。こうした中で、投資先としての日本は、現政府の経済政策もあり、為替の不安定要因もあり、リスクとリターンが見合っていない状況にあるというのがコンセンサスのようです。もっとも、トロフィー・インベストメント(自らのステータス・シンボル)としての東京不動産投資、そして中国富裕層を相手としたリゾート・ブームに対応した北海道開発といった案件が注目を集めているようです。

Tuesday, March 2, 2010

カーライル・グループによる人民元ファンド

さて、どうなりますことやら。(コチラ

日本語でのダイジェストはコチラ

ロイターによる、かなり質のいい分析はコチラ

Monday, January 11, 2010

備忘録 - プライヴェート・エクイティ・ファンドにおける典型的配当順位

PEファンドで買収案件を成功裏に売却、または(再)上場などでエグジットした場合の利益の分配方法です。たいていどこのファンドでも基本はいっしょなのですが、念の為に書き記しておきます。

1.まず第一に、各リミティッド・パートナー(有限責任組合員)のその時点での投資額。ようするにそれぞれの投資分の返済。

2.次に、各有限責任組合員の投資収益率(Internal Rate of Return; IRR)が見積書等で約されていた利率にいたるまでの相当額。現時点での相場は8%。(したがって、IIRの計算方法等は必ず明記されなければならない。)

3.ジェネラル・パートナー(無限責任組合員)へ、上記2の下における配当額とこの3の下における配当額の合計の20%をキャリード・インタレスツ(Carried Interests)として。(キャリード・インタレスツに関しては、後に詳述の予定。)

4.残存額を有限責任組合員と無限責任組合員で山分け。通常は8:2。

ただし、通常はクローバックといって、上記のキャリード・インタレスツの内、一定額(たいていの場合は約25%)を第三者預託とし、ファンドの解散時の最終決算で無限責任組合員が規定以上のキャリード・インタレスツを得ていた場合は、規定通りの分配となるように、この預託分を有限責任組合員に再分配することとなります。(ジェネラル・パートナー・クローバック)

また同様に、ファンドの最終決算において、無限責任組合員への分配が規定の比率にみたない場合は、有限責任組合員が収益分に比例した額を払い戻すことになります。